多賀城市内には、平安時代以来、都人が憧れ、歌に詠んだ名所・旧跡である歌枕が数多く残っています。その中には、大伴家持に贈った山口女王の恋歌もあります。多賀城の歌枕のはじまりには、家持が関係していたのかも知れません。
しほがまの 前にうきたる 浮島の浮きて思ひの ある世なりけり
山口女王(新古今和歌集)
わが袖は 汐干に見えぬ 沖の石の人こそ知らね 乾くまもなく
二条院讃岐(小倉百人一首)
ゆふされば しほ風こして みちのくののだの玉河 千鳥なくなり
能因法師(新古今和歌集)
ふままうき もみぢのにしき ちりしきて人もかよわぬ おもはくのはし
西行(山家集)
ちぎりきな かたみにそでを しぼりつつすゑのまつ山 なみこさじとは
清原元輔(後拾遺和歌集)
むつのくの 奥ゆかしくぞ 思ほゆる壺のいしぶみ 外の浜風
君が代は 千びきの石を くだきつつよろづ世ごとに とれどつきせじ
源顕仲(堀河院百首聞書)